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第20話「因果応報・その一」


 黒い龍との戦いから2年近い歳月が経ったある日の、とある山中…。

 さくら「まいったなあ…変なとこに出ちゃったよ…って!? 何アレ!?」

 山道を行くさくらの前に、どこからともなく現れる邪精(モンスター)。逃げようときびすを返したさくらは、しかし何時の間にか邪精に囲まれて大ピンチだった!! ここまでの平行世界編で出てきたさくらはなんか力ずくでイロイロステキなことができたのでちっとも大ピンチじゃなさそうな気もするが、今のさくらはブルワーカーの使用前の青年より貧弱な一般人、それはもう人間の限界越えたマッハの速さで走ったら気絶するくらいのか弱い少女である。邪精には勝てない。処でブルワーカー使うとホントにあの青年のような異常な身体変化をするのだろうか。

 さくら「わああどうしよう!? あとなんで私毎回こんな目に!?」

 それは言わない約束ってヤツだ。そして今まさにさくらが巨大カマドウマや巨大キノコに襲われかけた…とか書くとなんかやっぱり全然大ピンチじゃない気がするその瞬間、テレビ画面がもとい時空が歪む!! そしてまばゆい光と共にそこに現れたのはカレーが好きだったりする正義のヒーローではなく!!

 さくら「…たまご?」

 単なるでかいだけのたまごだった。転送のショックか、さくらの目の前で卵は割れる。そして中から現れたのは、金色の小さな龍だった(以下ちび龍)。そのちび龍はがうがうと邪精を追い払うと、さくらの方を向いた。

 さくら「な…なによ、他の邪精を追い払ってひとりで私を食べる気!? 私なんか痩せてるから食べたって美味しくないわよ!? お菓子の家に数ヶ月監禁してからでないと!! そしてその間食べかすの骨を握らせつつ脱出の糸口を掴むつもりです!!(←そこまで言ってどうするのか)
 ちび龍「がうぅ…」
 さくら「…? 食べる気はないの…? もしかして私を助けてくれたの!?」

 そうらしい。インプリンティングみたいなものか、龍はごろごろとさくらに懐く。しかしお菓子の家の魔女はアレはいったいどんなバカなのか。そんなん相手なら別にわざわざ幼い身空で殺人者とならんでも幾らでも逃げようはあったろうに、つい手を汚してしまったヘンゼルとグレーテルの将来やいかに。

 さくら「そっか、ありがとうちび龍さん…って、名前が無いのは不便よね…」
 ちび龍「がう」
 さくら「うーん…あなた、がうがうって鳴くから…フランソワ!!」
 ちび龍「ぐがッ!?」
 さくら「ウフフ気に入ってくれたみたいね!! お礼にご飯をごちそうしましょうランララランいくらとかほっけとかの美味しい北の国から2000〜♪」

 止める相手居ないからと暴走してないですかさくらさん(居ても暴走するような気もするが)。しかしさくらのネーミングセンス(例:キャデリーヌ)って良い悪い云う以前になんかもっとこう根本的なとこが間違ってるように感じられるのは筆者だけだろうか。ともあれ、以下は基本的に「ちび龍」と表記します。

 しかし、さくらの料理にちび龍は口を付けようとはしなかった。まずい!! これは究極にまずいぞ!! とか云うのではなく、このちび龍にとってどうも「ヒトの食べ物」は食べ物でないらしい。おそらくゾンビにとっての人間とか人食い族にとっての人間とか変なタコ型宇宙人にとっての人間みたいな特別な食べ物があるのだろう。なおこの例は一部嘘です(←一部なのか)。

 では、と図書館で調べるのだが、さすがに半ば伝説上の生物である龍の食べ物などそう簡単に調べが付くものでもない。出てきた結果はホントに「人間の女性を好んで食す」とかである。処でラクダやアルマジロって何を食べて生きてるのだろう(←物語に関係ありません)。で、結局市場で普通の食材を買って帰ることにしたのだが、途中、兵士達の会話が偶然耳に入る。

 兵士A「なんでも近くに洞仙が仙窟作り始めたらしいな…」
 兵士B「ああ…あまりのんびりしている訳にもいかなくなりそうだな」
 兵士C「それはそうと『もりの〜やさん』って絵本シリーズがあるが、森の総理大臣さんはどうにかならんかな」
 僧侶A「何、私の愛で全て解決しますとも!!」
 さくら「いやこういうシーンで全然関係ない会話挟まれても…。でも洞仙…。そうよ、洞仙の人ならもしかしたら…」

 巨大化して目からビーム出して触手を再生し、あるいは妖怪を召喚して大地を滅ぼすと悪名高い洞仙なら、むしろそういうことには詳しいかもしれない。

 結局今日の食事にも、ちび龍は口を付けようとしなかった。そして、日は過ぎる。

 さくら「はあ…このまんまじゃフランソワ(←さくら的には決定)死んじゃうよ…ホント、何食べさせればいいんだろう……ようし! 洞仙の人に会ってみましょう!!」

 とはいえ何処にいるのやらさっぱり判らない。町の人や兵士に聞いても、洞仙は実は最初から巨大だとか口から火を吹くとか一瞬で移動するとか、なんか微妙にステキな方向に詳しい話ししか聞けなかった。しかし途方に暮れたその時、事態は思いもよらぬ方向に!! 次回再びファイトクラブに嵐がもとい、町外れの家から出てきた青年に、さくらは見覚えがあった。しかし「ガチンコ」、何度嵐が吹き荒れたら気が済むのか。

 主人公(…最近この地の龍脈が弱まりつつある…原因を確かめて早急に手を打たないとな…)

 さくら「あの人は…ずっと前に私を助けてくれた人!! そういえばあの人妖怪連れてたよね…もしかして洞仙って…」

 そう、彼は第3話でさくらを助けてくれた、ちっとも通りすがりの新米洞仙じゃない人だった!! 今読み返してみるとスゲェ怪しい!! そしてさくらに遠くから見られているとも知らず(相変わらず殺気や悪意以外の普通の気配には鈍感である)、主人公は飛天功(テレポート)でどこかへと消える。

 さくら「今のは仙術!! やっぱり…って、何処に行っちゃったんだろ?」


違います。



 かくして因果の糸は再び巡り、そして真の因果の始まりもまた、近付き始めていた……つづく。


ひとつマエカオスシードひとつアト

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