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−−パート8:ニュージーランド文化編−−



 夢を見ていた。夢の中でウチはなんか知らんうちに連続殺人事件の最初の犠牲者になった…と見せて実は真犯人だったと云うどっかで聞いたような展開で、最後にブルース・ウィリスとかカート・ラッセルとかシルベスター・スタローンとかに撃ち殺される所で目が覚めてみた。せめてその銃の持ち主がアル・パチーノかトミー・リー・ジョーンズなら…もとい、問題はそんな変な夢でなく、面白いことにニュージーランドで見た夢の中では筆者、英語で話してたのである。そりゃあもうペラペラと。しかもどうも筆者、夢の中の方が語学力はあるらしい。じゃあちなみに火星で寝ると火星語で夢見るのだろうか。あと関係ないが何故言葉が流麗な様子をさして曰く「ペラペラ」と気の抜けた、例えるならすっかり沈黙させた後の気泡緩衝シート(プチプチ潰すヤツ)に似合いそうな擬音語(擬態語か?)で表すのだろう。

 さて、今回はそのニュージーランドについて語ろう。ニュージーランドの人間は基本的に西洋系白色人種と先住民マオリ族から構成されている。西洋系は大半が過去にイギリスから来た人の子孫で、マオリ族は太平洋に広く分布するムー大陸もとい海の民の末裔とされている。以前アディダスのCMでオールブラックスが出てたのだが、あのCMの中でフラッシュバックするように現れる、顔に入れ墨している人がマオリ族である。
 さすがに数は減ったとはいえ、現在でも伝統的な入れ墨を施しているマオリ族の人を街で目にする機会は少なくない。日本では入れ墨イコールきゃあやくざよォーと云うイメージなので、当初マオリ族について知らなかった知り合いが無条件に怖がっていたが、いや実はまじで怖い。何が怖いって、バスの中でふと脇を見たときに「スターウォーズ エピソード1」のダース・モールの顔が目の前15センチにあったと想像してみて欲しい。実際そんなんなったのだ筆者。

 で、先刻のCMでも描かれてたが、オールブラックスが試合前にやるやたらアツい踊りが「ハカ」と呼ばれるマオリ族の戦闘の踊りである。それにより士気を高揚させるそうで、以前ホストブラザー:ブレアのラグビーの試合を見に行ったときにも両校のチームが試合前互いにおっさーおっさーと掛け声も高らかに踊りあっいた。そのときは筆者など「ほう、ラグビーの試合は踊りから始まるのか?」程度の認識だったのだが、ニュージーランドでは普通らしい。日本でも試合前に阿波踊りとか佐渡おけさとか踊ればいいのに(←かえって士気が落ちそうである)。

 あとニュージーランドの地名のうち、なんか母音が多いのは大抵マオリ語由来と思って間違いない。ロトルアとかカイコウラとかケリケリとかティアナウとかトンガリロとか、マオリ語は他の太平洋系の言葉(日本語も含む)同様、母音で終わる言語なのだ。

 そういえばバスの恐怖体験で思い出したが、日本だと、バス降りるときにはブザーを鳴らすべくボタンを押すのだが、ニュージーランドのバスはこのボタンの代わりに紐が付いている。いや天井から何本も何本も何本も何本も、さながら自殺の名所で取った記念写真にごく普通に見られる無数の青白い手の様に垂れ下がっているのでなく、窓ガラスの上辺りにちょうどカーテンレールのように横に紐が通してあり、それを引っ張るとびぃーと鳴るのだ。
 しかし関係ないがあの手の手の(←わざと)心霊写真、さあ君もおいでおいでとあの世に誘っている様で、確かに怖いことは怖いが、アレがもし「足」だったらどうであろう? おいでおいでと誘う青白い足が何本も何本も何本も何本も、こうすね毛の濃いも薄いも数ある中に。そんな心霊写真。ちなみに筆者なら怖がっていいのか笑っていいのか判らないが、とりあえずアンビリーバボーかUSOジャパンに送りたい。

 で筆者、この紐を一度は引っ張ってみたいと常日頃から隙を窺っていたのだが(←相変わらず妙なところにステイタスを探す人間である)、実際鳴らせたのはわずか2度だった。とにかく混んでるのだバス。と云え、パーマストンノースは田舎なので、バスと云うかワゴン車みたいなカンジなのだが、ソレで20人くらい乗れて、市内何処でも1ドル均一。前述のように当時のレートは1ドル70円くらいだったので、かなり安い。ちなみに筆者、留学後しばらくこの感覚が抜けずにいて、アメリカドルもこのレートで換算し「うおっ安いじゃんこのステルス戦闘機のような形をした奇妙な通販健康器具!?」などと思ったりしていた。そりゃあニュージーランドドルで換算すれば安いだろう。

 言葉について云えば、思っていたほど訛ってはいなかった。イギリス英語とニュージーランド英語の違いは、まあ日本語の標準語と関西弁程度の差であろう(←そうか?)。ただ、この地域の英語に特有な「エイ」を「アイ」とする発音には混乱したものだった。「8」は「アイト」で「名」は「ナイム」である。いやあこの法則を知ってても慣れないと戸惑いまくるのだこれが。
 例えば筆者の体験だと、ゲイルに「うっぢゅーらいかかいく?」と聞かれたことがあったのだが、「かいく」など云う言葉は筆者は知らないので、もはや想像で補うしかない。「『かいく』? 『かいく』とはいったい!? 『うっぢゅーらいく』と聞くからには少なくとも飲食物だろうが…ここで迂闊に『おぅいぇーす』とか答えて得体の知れないナニかねちょねちょした変な色の物体を食わせられるのは避けたい…が断ってもしチョーおいしいナニかだったら…ッ!?」など、一瞬(←一瞬か?)迷うハメになる。
 これが普通の英語なら「Would you like a cake?」「Yes! Thank you,please」と答えられるのだが…そう、「かいく」は「ケーキ」である。今となっては笑い話だが、あの時はもうマジで判らなかった。


 いやしかし、ニュージーランドは本当に平和だった。何せ一ヶ月居て誰も、なんか盗まれたとか殴られたとか「ヘイヘイおにーちゃんいい薬あるよ、そりゃもうハゲによく効くこのいい薬、今なら1万円!!」とか云う話しが全く出なかったのだ。
 あと留学前の説明で、「ホストファミリーが駄目だったら気軽にホームステイ先の変更を申し出ていいからね…っても、日本人はあんまり感情を表に出さないから、ちょっとくらい嫌でも我慢する人ばっかりなんだけど、ホントに気にしないで申し出ていいから」などと、なんかもう必要以上に不安を煽りまくる心得を申し渡されたのだが、実際にホームステイ先を変更した人は居なかった。さては君らマジで申し出る勇気がなかったんだねコイツぅとか云うんでなく、みんながみんないい家庭に恵まれたらしく、文句のひとつも出なかったのだ。ちなみに中国や韓国からの留学生はなんやもう文句やトラブルが多くて大変だそうである(…)。留学生担当のジル曰く、日本人留学生は「ちょっとシャイだけど、素直でいい子ばっかり」だそうで。
 この辺り、とかく「海外では駄目」とか云われる日本人の謙虚さだが、最近はこの謙虚さを美徳と思う外国人も増えてきているらしい。英語話す国に行ったからと、例えばおばさんが道を塞いでいるとき、何も英語国らしくストレートに「おいそこどけやコラ」などと言いつつハイキックせねば退いて貰えないとか、まずい料理を指して「この料理美味しい?」と聞かれ「食えるかこんなもん」とちゃぶ台返ししなければ意志が通じないとか云うことはないので注意されたい。て云うか普通ケンカになると思う。

 そんなこんなで、マッセー班についてはトラブルらしいトラブルはなかった。せいぜい筆者以外全員が風邪引いたこととうなぎ釣りがドタキャンされたくらいである。実に平和な一ヶ月であった。
 …実は余所の留学先では同級生の死亡事故が起き、留学プログラムを途中切り上げて帰国したと云う、マジでシャレにならん状況があったりする。マッセー組の中にも知り合いが居て、そのときはわあわあと大変だった。しかもそんな日に限って既にツーカーの仲だった教師リチャードが欠席で、事情知らない代理の先生が来たのだが、雰囲気の暗さに困惑していた。あんな暗いクラス、筆者も初めてだった。

 他には、ちょうどこの時立て続けにダイアナ元妃とマザーテレサが亡くなったのだが、ニュースや新聞で非常に大きく特集されていた。確かにニュージーランド、イギリスやキリスト教に関しての興味は日本の比ではないのだろう。


ヒトツマエヒトツアト

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