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−−パート7:ウェリントン編−−



 9月13日(土)。この日の天気はめずらしく快晴で、朝からホストブラザー:ブレアのラグビーの試合を観戦に行き、そして午後から首都ウェリントンへ向かうというハードスケジュールだった。ちなみにこれ学校のプログラムとは関係の無い休日行動で、メンバーは筆者とホストマザー:ゲイルだけである。

 ここでブレアについて説明しておこう。キャンベル家の次男(顔そっくりの長男はもう一人立ちして別の街暮らし)で、目下17歳。高校生で、パーマストンノースボーイズハイスクールのラグビー部のエース…と云ってもなんだか判らないだろうが大丈夫、筆者もぜんぜん判らなかった(…)。が、実はこの高校、大学まで含めた全国学生ラグビーで2位の実力だという。知ってのとおりニュージーランドは世界屈指のラグビーナショナルチーム、オールブラックスの国であり、そこでそんなレベルってことは実はとても凄いような気がする。日本で云うなら甲子園常連校のエースと云う処か。
 筆者、花園常連の高校出身の癖にラグビーのルールは全く判らないのだが、ともあれその試合はブレアのチームの圧勝だった。ゴールが決まる度に観衆がどたどたと地団駄を踏むので(こういう応援らしい)、ゲイルと一緒に筆者もどたどたやっていた。ブレアはブレアで、ボールを地面に置いて蹴る役ばかりしていたが、あれがラグビーのエースなのだろうか。
 でもやっぱラグビー、最低限のルールは知っておくべきだったかも…。はっきり言って上の説明でラグビー専門家に指さして笑われない自信は余り無い。なお次の試合は来週の日曜、オークランドで、ソレが決勝戦だと云う…が、奇しくもその日は筆者がこの街を離れ、そのオークランドへ向かう日だった。
 で、祝勝パーティーと云うことでみなで昼御飯。その後ブレアはラグビー部の合宿なので、筆者とゲイルだけでウェリントン一泊二日の旅ご招待と相成った。


 さて、パーマストンノースから2時間ほど掛けて辿り着いたウェリントンは、もちろんニュージーランドの首都なのだが、飛行機の着いた北の都オークランドよりは小さな街である。とにかく坂の多い街で、傾斜10度20度は当たり前、体感傾斜70度はある(←あってたまるか)坂を車でがしがし掛け登ったり降りたり止まったりである。気分はリニアモーターなジェットコースター。こりゃあパワーのない車では生き残れまい。

 この街での宿はゲイルの友人、ダン&マーガレット夫妻のお宅だった。これがまた「レッツ豪邸」に取材されそうな家で、ウェリントンの港(ポート・ニコルソン)を一望できる高台にあった。で、ここのご主人ダンはニュージーランドのジェットボート界の有名人とのことである。なんかずらりと並んだトロフィーに「なんとか杯優勝」とか「ワールドシリーズ3位」とかあるんでちょっとびっくり。だってワールドシリーズですよ? そんなときそのダンが、以前テレビに出たときのビデオを見せてくれた。「これがオレさ!!」などいちいち解説してくれたのですっかり打ち解ける。このときたまたまやってた「ミスタービーン」の日曜大工の回で観て豪快に笑ってたり、このダン、実にフレンドリーなナイスミドルだった。そういやブレアも「シンプソンズ」(CCレモンのCMのアレ。指が4本しかない黄色ナメック星人のブラックコメディ)好きだったが、面白いものに国境はないと云うことだろう。

 夕食後ドライブに誘われ、ダンのカローラ2に乗ったのだが、これがただのカローラではない。はっきり言って下手なクラウンや上手なカブより乗り心地いいし、日本でも乗ったことの無いようなハイテク車であった。スピード出まくるし、ボタンひとつで車庫操作できるし…いやリモコンシャッターは筆者の家にもあるが、ダンのは予め車にコントロールパネルが据え付けてあるのである。

 そのとき案内されたのはガイドブックにも載ってるマウントビクトリアだった。ここには市街地を見下ろす展望台があり、夜にも関わらずたくさんの車が止まっていた。「南十字星を見せてやる」とのことでここに来たのだが、なんかどれが南十字星やらさっぱり判らない。ダンも「あれがサザンクロスさ!!」と、なんか実はアメリカ人だろうあんたってカンジのオーバーアクションで指さしてくれるのだが、やはりいまいち判らない。空が綺麗過ぎて、見える星が多すぎるのである。満天の星空とはこういうものを云うのだろう。日本では見ることも叶わない星空に、我知らず震えた。いや体感温度既にマイナスな風が肌に痛かったってのもある。

 その後、夜のウェリントンを散策。この寒い夜と云うに人間実に多いのだが、いい年したストリートアーティストがあちこちでライブやっているあたり、やはり異国である。見た目60過ぎ、サンタクロース髭のじいさんがサックス吹いてるなぞ日本ではあまりお目にかかれないと思う。だいたいそこの道端でファイヤージャグリング(火のついた棒でお手玉するアレ)やってるおっさん、あんた日本でソレしたら警官が来るだろう。
 ちなみに道中、「日本食料品・武道具」などと(漢字で)書かれた、なんでこんなカップリングでモノ売るのかいまいち理解しがたい店を発見するが、さすがに22時、もう閉まっていたのが実に残念である。ダンにその日本語の解説を求められたので「Japanese foods & equipments for samurai」とか答えたのだが…やはりダンも怪訝そうであった。筆者の単語力は置いても豆腐と武道着を一緒に売るこの店のセンスがだいたい妙であろう。もしこれで店主が日本人ならやはり日本人のセンスを疑われる気がする。誰かウェリントンでこの店を発見したらぜひ店主を改心させて欲しい。

 そんなこんなでダン家に帰ったのはもう日が変わろうかという頃だったが、実に楽しかった。こういう、観光ではけしてわからない「日常」を体験するのが、筆者や異文化コミュニケーションを学んでる者にとってはいちばんの楽しみであろう。
 と云え、旅行者が異国で夜の街をうろつくのはあまり感心できたことではないので、地元の人と一緒でもなければ辞めた方が良いと思う。


 明けて翌9月14日。今日は日曜日、一日使って昼のウェリントンを散策することに。ダンは仕事で朝から出てったので、ゲイルとマーガレットと筆者でレッツゴー。なお、以下は「地球の歩き方:ニュージーランド」のウェリントンの頁を見ながら読むと判りやすいハズ。余談だがこのシリーズ、「地球の走り方」とか「地球の踊り方」とかだったらさぞ売れなかったであろう。

 で、まず行ったのはケーブルカーであった。ウェリントン名物のこれ、元々は観光用ではなく通勤通学用に作られたもので、今もそうなのだが、よって逆に休日はガラガラだった。そんなお茶目なケーブルカーで登りきった先には植物園だの天文台だのがあったが、筆者たちはそんなんあまり興味ないので適当なところで切り上げて退散することに。なんか既に観光客ではない。ともあれ、このケーブルカー、斜めにがたがた登っていくのが楽しいので、ウェリントンに行ったらぜひ一度お試しあれ。

 次に行ったのは国会議事堂だった。外国の国会議事堂というとどうも銃剣持った儀仗兵が靴音も高く歩いてるようなイメージがあるが(←筆者だけか?)、ニュージーランドの国会は普通の公園みたいなカンジで、怪しい者には即発砲じゃあうへへへな警備兵どころか、ホワイトハウスみたいな柵さえなかった。こんな甘いセキュリティで万が一宇宙人が攻めてきたらどうするのだろう。まあ「インディペンデンス・デイ」とか「メン・イン・ブラック」とか見る限り大抵の宇宙人はまずアメリカにツアー組むから大丈夫なのか。
 ちなみに議事堂の愛称は「ビーハイヴ」…「蜂の巣」という意味で、由来はそのまんま蜂の巣みたいな形だからである。麦藁帽子とか編み籠みたいにも見える。
 ってな訳で、議事堂の庭芝生でランチタイム。ホワイトハウスの庭でそんなんやったら何時の間にか死んでいそうだが、このニュージーランド議会はいたってほのぼのだった。

 そして、ついに北の工作員もといパーマストンノース観光者の我々は議事堂内部への潜入を果たす!! て云うかフリーパスで大丈夫なのか…? 日本でもそうなの? 加えてガイドのおっさんが議事堂内部を案内してくれると云うのでぜひもなくプリーズ。このガイドツアー(ちなみに無料)、1時間に1回くらいやってるとのこと。さては暇なのか君。

 ビーハイヴの内部は瀟洒な造りだった。終わり。

 …って、これではせっかくガイドしてくれたロドリゲス(外見から勝手な命名)に悪いのでもう少し書くと、筆者など休日だからか人気のない議事堂で議員席のマイクをいじったり、小会議室のふかふかな椅子に座ってみたり、地下の耐震用スプリング柱をがしがし動かそうとしてみたりと、実に楽しかった(←て云うか止めろやおっさん)。
 そうそう、会議室の扉の横にマオリ族の浮き彫り(トーテムポールみたいな祖霊の彫像)が飾られていたりして、この辺りにニュージーランドの歴史を感じることができた。日本で云うなら掛け軸や般若の面が飾られているようなものだろうか。

 楽しみつつのツアーも小一時間で終わり、記念と云うことで来館者名簿に記帳する際に、以前の来館者名を見てみると、実に多種多様の国名で埋まっていた。しかも漢字で書いてあったりもする。そういうのは大半が日本人であって、辿っていくと前の週にここに来て記帳して帰った同級生の名前まであった。やはり日本人、することは同じなのか…なんかビミョーに敗北感を感じて議事堂を後にする。まあこのグループでは深夜のウェリントンを徘徊したのは筆者だけさ!!(←さもしい優越感)

 さて議事堂に別れを告げ、次に向かったのは、風力発電用の巨大なプロペラが設置されている小高い丘だった。これも観光名所としてガイドブックに載ってるハズ。筆者らは車で上ったので楽々だったが、途中幾人も自転車を引きずっている人たちも居て、その表情はもうマジで辛そうであった。そりゃあ1キロはありそうな上り坂、チャリで登ると云うのは無茶であろう。「フフン、君達は坂の街ウェリントンを少し舐めてるだろう?」などと自分観光客の癖に思う。

 で、この風力発電用プロペラ。観光名所の癖に一基だけしかない。ソレの解説文や写真の置かれた小休憩所のような所で知ったのだが、これはまだ実験的なものだそうで、ゆくゆくはもっとたくさん建てるらしい。ちなみに設立は1993年なので、筆者の行った当時でさえ、もう4年も実験してることになる。こんな休憩所建てたり登山道整備したり駐車場作ったりするくらいならその金で別のプロペラ作れば良いと思うのだが。この辺り既に風力発電を諦めているような気がする。

 そんなこんなでマーガレットに別れを告げ、筆者とゲイルは再びパーマストンノースへと帰った……つづく。


ヒトツマエヒトツアト

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