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−−パート3:ヴィジット編−−



 ヴィジット(visit)ってのは「訪問」とかそんな意味で、小学校の頃の社会科見学みたいなカンジである。ちなみに筆者は亀田製菓と消防署と仏壇工房とパン工場に行った記憶があるのだが、そのうち仏壇工場とパン工場はともに親戚の工場なのでなんか変な気分だった。

 まずは9月6日(土)。この日は1日使ってのファームヴィジットだった。「ファームヴィジット」と書くとどことなくエレガントで、例えるならアルプスでハープを弾くお姫様なカンジがするが、日本語にすると「農場訪問」。同じく例えるならアルプスで長さ数十メートルと云う実に人間ひとりくらい余裕で死ねるブランコを命綱無しに苦もなく操る少女なカンジである。

 まあソレで訪れたのは、パーマストンノースから車で1時間程の山奥にある牧場だった。そこに来るまでにトイレ休憩&朝食に寄った小農場で牛の乳搾り光景を見学したのだが、さすがにその辺は北海道でよくある風景とあまり変わらないと思うので端折る。よく判らない人はドリームキャストの北海道旅行ゲーム「北へ。」でもプレイすると良い(…)。

 さて、ニュージーランドで牧場と言えば居るものは決まっている。牧羊犬である。いや日本にもいるだろうが、とにかくこれを見たかったのだ筆者は!! おっさんの口笛で走る犬に追われ、羊が慌てふためいてメーメーメー。ナマで見るとやっぱり面白い。

 そのついでに羊の毛刈りも見学することに。これ、木枠の中に羊の頭を固定してうぃんうぃんやるのだが…さすがに羊にもトラウマ(←ギャグ?)はあるらしく、まるでギロチンに掛けられるようにぶるぶると震えてるのだコレが。他人事だが可哀想である。刈られた後肌に小さな傷を負ってたから仕方ないのかもしれないが、さすがに羊に「気を付けたまえ毛刈り役、私は毛を刈られることになっておるが、肉を切られることにはなっておらん!!」とかトマス・モアのような態度を期待するのは無理なのか。羊は毛を刈り尽くされ解放されるや否や、Bダッシュで敵前逃亡であった。


 その後牧場主さんちに招待され、氏が狩ったという動物の毛皮や剥製、あとサスペンスドラマの金持ちの被害者宅でよく見る生首みたいな壁飾り(正式名称不明)を見学させてもら…おうとしたのだが、このミニ展示室、狭くて人間入りきれないのだ。12畳程のスペースに動物の死体(←いやな言い方)が所狭しと置かれているのだから、そこに入れるとしたらせいぜいが両手に数えられる程度で、出遅れた筆者は結局部屋に入らず、ご主人の説明する声が響く中、廊下でその家の奥様&お子様と話していた。なんでもご主人、客が来るたびに獲物の解説…にかこつけた単なる自慢話しをするのが好きなのよねーと苦笑していた。つまり今聞こえるコレって実はソレ…? ビミョーに不穏な推察をした筆者はついにその魔窟へ近付こうとはしなかった。

 そうこうするうちに陽も高くなり、何故かと云うか案の定と云うか、ひどく疲れた様子でミニ展示室からみなが出て来て、隣接の小学校に移動することに。今日はここでランチするとのことだった。
 周りの何処を見ても山しか見えない雄大なアルプス…もとい田舎の小学校での食事は格別だったのだが、しかしこんな辺鄙な所にある学校に生徒がいったい何人居るのか聞いたら、これがそう少なくもないらしい。なんでもあちこちからスクールバスで狩り集めて来るそうで、教室には児童の描いたらしい絵などが幾つも貼ってあった。


 そこで出された料理はというと、いかにも「今そこで殺してきたのさHAHAHA!!」な羊の肉やら新鮮なキウイ(果物)、なんかよくわからん肉(鳥なのだが…とりあえずキウイではあるまい)など。キウイはまあ日本でもニュージーランド産全盛なのでいつもの味だが、肉はやはりおいしい。
 そう、料理。ニュージーランドというと植民地時代の影響が濃いため(現に言葉や建物はかなりイギリス風である)、正直食事には全く期待していなかった。イギリス料理ってジョークのネタになるほどまずいことで有名だし。曰く、「ロンドンには60の宗派があるが、ソースは一種類しかない」とまあ、ややもすれば究極にして至高のまずさであるらしい。ヒトの生み出した食文化の(別の意味での)極みである。よくもまあそんな影響を受けなかったものだ。
 ハッキリ言ってニュージーランドの食べ物は美味しい。だいたい生水が飲める外国はそんなにないハズで、それだけでも充分ニュージーランドの環境がうかがい知れる。魚も普通に食べられてるので(ゲイルは魚嫌いだったけど)、主食が芋と言うことを除けば実に日本人の口に合うハズ。

 そして、午後は「トレッキング」するとのことだった。トレッキング云うからたいして歩かないと思っていたらコレがなんのその、山道を1時間以上延々と歩かされるハメになる。そう云えば「スタートレック」もトレッキングには違いないのだった…。それならそうと先に言ってくれとも思うが、仕方無く曲がりくねった山道を行く。関係ないが筆者の英和辞典、なんかの項目で「曲が(改行)りくねった」とあり、「きょくが(改行)りくねる」? 「りくねる」っていったい何? さては新たな動詞か…? とか数秒間も真剣に悩んだことがある。まあ今となってはソレも青春というヤツだ。それで結局みな疲れ果て、ようやくバスに辿り着いた頃にはへろへろであった。

 そんなこんなで夕刻になり、帰途につくことに。トイレ休憩に小さな植物園に寄った他はバスのなかでぐーすかやってるうちに今日の遠足は幕を閉じた。


 お次は9月12日(金)。キャンパスで馬に道を譲るのにも慣れた頃、我々取材班は更なる神秘に遭遇することになる!! さすがは農業先進国ニュージーランドの大学だけあって、農業の研究も盛んなここマッセーは学内外に畑や牧場を持っている。だから馬もひひーんと歩いてるのだが、まあソレ関係でこの日の放課後は学校内の果樹園を案内してくれるとのことだった。
 となれば答えはひとつ、「もしや見学ついでにニュージーランドの様々な果物を食わせてくれるのでは!? ヒヒヒ」といやがおうにもずこずこ高まった期待はしかし。

 筆者「…なんもないじゃん!?」

 そう、繰り返すが今は冬。ニュージーランドの8〜9月は、日本で言うなら2〜3月の東北地方である(パーマストンノースは秋田の能代くらいの緯度)。それはもう北風小僧の寒太郎がそこらじゅうでヒュルルンルンルンルンし、ナマハゲが悪い子はいねぇがァURYYYYYッと跳梁跋扈し、北へ帰る人の群れは誰も無口な頃である(←偏見)。
 まあ生徒たちはみなホストに借りたウール100%のニュージーランド産ふかふかもこもこに身を包んでいるためあまり感じないが、実はこの果樹園、ついバナナで釘を打とうとしてぐにょりと食べ物を粗末にしてしまうほど寒い。だからして、木々なぞはみな葉っぱ64枚どころか1枚もない状況であった。筆者など「オーチャード(果樹園)でお茶どう?」と云うイカスジョークを考えていたのにこの仕打ちである。2敗目だ。ここで案内人のマリオ(外見から勝手なあだ名)に対して敵意を抱いたからとて誰も責められまい。

 しかし運命は我々を見捨てはしなかった!! 太陽の見えない寒空の中、要らんほど…もとい実に熱心に説明してくれるマリオの後をついて行くと、終点としてなんか作業用の建物の中に案内された。そこで「さあこれを食え」的に何故か白雪姫を思い出してしまう不敵に素敵な綺麗さの真っ赤なリンゴを渡される。ソレ自体はおいしかったのだが、ソレより筆者はそこのリンゴ判別機(?)にあった、三菱のマークの菱形を扇形にして中心に●を置いたような、どこかで見たようなデンジャーなマークが妙に気になってそれどころではなかった。やはり異国は一筋縄ではいかない。生きて帰れて良かったと今にして心の底から思う。

 しかしマジ、なんで日常生活の場にあんなマークがあるんだろう…。単にマリオのイタリアンジョークなのか(←何故イタリア)。


ヒトツマエヒトツアト

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