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−−パート2:序盤編−−



 明けて8月24日。いよいよ辿り着いたニュージーランドの第一印象は、言っちゃアレだがご想像の通り「ど田舎」であった。英語で云うならスペシャル田舎(←どの辺が英語)いやソレはど田舎さに関してはウチの実家(新潟平野)もかなりのモノだが、ともあれ筆者、実際に行くまではガイドブックや先輩の体験談を頭から信じ、「ニュージーランド」=「地平線の果てまで羊しか居ない国」とかいう印象を持っていたのだ。
 しかしこれが行ってみると大間違いで、羊だけでなく牛も居るのである!! おのれ騙したなガイドブック。これはかなりの衝撃だった。あ、人も居ます。

 そしてここに来て初めて明かされた衝撃の事実!! などとそこらのドキュメンタリー的な構成だが、とにかく我々取材班は腰を抜かさんばかりに驚いたのである!! なにがオラたちびっくらこいたって、引率のはーちゃん(仮称・当時23歳)秘書課職員、ウチらを引率するくらいだからさぞ英語得意なのだろうからククク頼りにしてますぜ姐御とか思っていたのに、実は「あたし、英語できないねん」とか、ソレはもうステキな笑顔で言ってくれたのだ!! なんかケント・ギルバートだと思ってたらデーブ・スペクターだったような晴天の霹靂である。一体全体なんでそんなんが引率者に選ばれたのか。理由を少し柔らかめに問うに、「だいじょうぶだいじょうぶ、通訳のたまごが16人もいるじゃん」と、実に答えになってなさ過ぎていっそ潔い。さてはアレか、獅子は生まれたばかりの我が子を千尋の谷に豪快に蹴り落として這い上がってきた者のみを認めるというヤツか。しかし通訳のたまご人間ハンプティダンプティにソレは酷ではないか? 分不相応という言葉がある。例えば練馬区在住のスズメの夫婦がライオンに憧れて同じことをしたらどうなる!? ちなみにライオンの千尋の谷ってのは象の墓場と同じような迷信なので、良い子はあんまり真似をしてはいけません。

 まあ先方に20年近くニュージーランドで暮らしてる日本の方がいてくれたため事なきを得るが、あのときはさぞ皆心細かったであろう。考えてもみて欲しい、ツアー旅行で火星辺り行ったとする。それで信じていた添乗員に「はっはっは、実は私火星語あんまり話せないんです」とか言われたらどうしよう。そんなヤツに任せたら気が付けば宇宙戦争で地球が消滅しているかもしれない……!!

 最初に着いたのは北の都オークランドで、ここから留学先まではセスナで移動しなければならない。ちなみに筆者など空港内を移動するバスで間違えて変なとこで降りそうになってしまったのだが、そこで「こばけん!!」と止められたのが全ての元凶で、結果この留学のせいで筆者を「こばけん」と呼ぶ人間が一気に10人以上(って云うかメンバー全員)増えてしまった。引率者はーちゃんさえその調子である。

 ともあれからセスナでぺすぺす(←いやな擬音)1時間掛け、筆者たちはようやく留学先に辿り着くことができた。そここそがパーマストンノース。ニュージーランド北島の中心に位置する小さな街である。案の定田舎だが、市の中心部はウチの地元よりずっと都会だった。古き良きイギリス風の建物を残す、人口7万人なのにニュージーランド第6の都市。なお「パーマストンノース」の意味は「巡礼者の街・北」らしい。後の話しだが、「ここが『・北』なら『・南』は?」とホストマザーのゲイル(なんか初めて聞いたときどっかの悪役のような名だと思った)によれば、南島の方に「パーマストン」があるらしい。ウチの手持ちの地図には載っていなかったので、恐らくはマウントクックの山麓にある幻の秘境で、辿り着いた者に神の祝福が与えられる伝説の都市とかだろう。

 で、パーマストンノース空港から直行したマッセー大学は、「自然環境に大変恵まれた」と云う、辺境の大学にありがちな形容詞の似合いそうな大学だった。なんかニュージーランドでも2番目くらいに大きいらしく、キャンパスからしてひたすら広い。構内をバスで一周するのにも30分くらい掛かる程で、もはや構内で平気で迷子になれる大自然の秘境である。あと普通は大学の構内に「この道は馬優先」と書かれた交通標識は無いと思う。
 と云え、筆者たち留学生組はキャンパスのすみっこの「留学生センター」という建物内のみで勉学に励むそうなので、とりあえず遭難する予定は組まれてないらしい。ちっ(←?)。


 まあ大学には来たが、今日の予定はホストファミリー紹介だけで、あとホスト宅に「帰る」ことになる。緊張と不安と飛行機の騒音でみなろくに眠れてないので(なお筆者には午前3時までの記憶と午前3時半からの記憶があるため、その間30分は眠っていたらしい)、そりゃあ「じゃあ今から一日目の授業です」とか言われたら、あるいは不可と引き替えにしても暴動起こしたかもしれない。

 それでホストファミリーがやって来た順に生徒たちの名が呼ばれ、それでもう一緒に帰るのだと云う。で、これから一ヶ月もの間筆者がお世話になるキャンベル家は母子家庭で、不安に感じていた昨日の自分にグッバイな程フレンドリーな親子であった。母上が先に述べたゲイルで、息子がブレア。17歳のナイスガイ。ふたりだけで淋しくないのかと思いきやご近所に親戚さんが居るわ居るわで、結局毎日のように誰かしらに会う状態であった。お隣さんからしてゲイルの姉の家で、そこにも同級生がステイしているのだ。

 キャンベル邸は母子ふたりで暮らすには随分大きな家だった。だいたいなんだってこの家、リビングにビリヤード台がでんと置いてあるのか。日本で云うなら庭に土俵があるようなモノである!!(←違うだろう)もしやニュージーランドではビリヤード台は標準装備なのかも…と筆者の歪んだニュージーランド観(例:地平線の果てまで羊と牛と人間が居る国)に修正が加わりかけたが、単にブレアの趣味だとのことで、実際余所の家には見かけなかった。

 この最初の自己紹介の際、筆者はホストへの土産として和風アイテムを色々と持っていったのだが、その中でひとつ、イカすジョークと共に取り出して笑わせ、ソレをもって以後の関係を円滑に行うための潤滑油…は見たこと無いんでまあサラダオイルのようなネタを用意してあったのだ!! そして今まさにソレが発動した!!

 筆者「あ、コレは…」
 ゲイル「あぁ、扇子ね!!」

 …。

 なんかいきなり止まってしまったが、実は予定では「扇子」を出しつつ「この扇子はgood sense(イイカンジ)でしょ?」と振って「HAHAHAー!!」(←いわゆるひとつのアメコミ笑い)と云う展開を目論んでたのにこれである。くそう負けた。遠い異国の地にしてお笑いの道は果てしなく遠いことを、筆者は今更ながらにして思った……つづく。

 でも「扇子」ってそんな国際的な言葉なの…? たまたまゲイルが知ってただけ…?


 8月25日(月)。
 初日はゲイルにバス停までの道を教えて貰おうとしたのだが、なんか彼女もよく判らないそうである。「これはもしや初日から遅刻か!? やった!!(←?)」などと思っていると、親切にもゲイルは車で街の中心部のバスステーション(ここでバスを乗り換えて大学に行く)まで送ったげると云ってくれた。かように、普段から車を使ってるのでバスはあまり知らないとのこと。で、帰りもそのセントラルステーションまで迎えに来てくれると云うので、これはもう勝ったも同然であろう。

 で、大学の初日はプレースメントテストだった。クラスが幾つかあって、このテストの成績でどのクラスに入るか決まるのだが、まあこう云うテストはいつもやってるので別段どうと云うこともなく終了。いやあしかし中学生の頃は外国人さん見るとつい斬り捨てて逃げ出したくなるような威圧感に駆られたものだが、人間成長するものである。実は筆者高校まで英語はスゲェ苦手だったのだ。今も苦手だけど(←おい)、とりあえず物怖じすることはなくなったのでだいぶマシ…。
 その日はソレだけ、午前中で終わりだった。帰ってからバス停の場所も教えてもらったので、もはやなんの不安もなく、前途は洋々と広がっているかに見えた……が。悪夢は突然に襲いかかる!!


 8月26日(火)。
 大学2日目。ついに授業が始まった!! と云え、内容については日本でしてることとたいして変わらない(日本でも先生は外国人だし、授業内では日本語不可なので)が、他国の留学生と色々話せたのは大きかった。他国の留学生には日本でも会えるのだが、当たり前だがみんな「日本語を学びに来ている留学生」なので、「英語を学んでいる留学生」に会ったのは初めてだったのだ。

 しかし。その帰り道である。昨日の引きで言った悪夢は唐突にやってきた!!

 筆者「…何処だここは?」
 友人「なんかバス降り間違えたみたいな…」

 そう、ズバリ迷子である!! 異国の地で迷子になったときの心細さと来たら、さっぱり予習してないのに翻訳の順番が回ってきたときの比ではない!! これだと例が一般性を欠くので言い換えよう。床屋でタオル被せられたまましばらく放って置かれるような心細さである!!(←そんな程度なのか)
 なんで降り間違えたかと云うと、日本のバスと違ってバス自体があんまり親切ではないためである。運転手のおっちゃんは実にフレンドリーで、ちょっと顔見知りになっただけで笑い掛けてくれるくらいなんだけど、システムが不親切なのだ。電光表示もアナウンスもないので、降りるべきバス停を自分でしっかり把握して置かないと簡単に間違えてしまうのだった…。

 幸いこのときに迷子になったのは筆者だけでなく、同じバス停で降りるべき友人(前述のお隣さん、ゲイルの姉ジェニファーの家にステイしてる)も一緒だったため、ヤツも巻き込むことに成功。やはり策は幾重にも張り巡らせておくべきであろう。で、1時間ほど彷徨ってようやく帰還に成功。ゲイルに笑われる。ハー。


 8がつ27にち(すい)。きようはまいごになりませんでした。よかたです。


 …とまあ、普段の学校生活ではそうそう波乱バンジョー肩に担いでヘイヘイホーってカンジではないので(←あってたまるか)、以降はテキストゲーム定番の「選択肢まで飛ばす」モード…もといイベント発生時を中心に書いて行くことにする。云うなればいいとこだけ抜き出しモード。ちょっと時間が前後するがあまり気にしないように。……つづく。


ヒトツマエヒトツアト

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