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−−パート1:旅立ち編−−



 それは1997年の8月23日。無知な友人から「土産にニュージーランド饅頭を頼む」などとあさりちゃんのようなことを云われ一笑に付すも、「…いやウチが知らないだけでニュージーランドにも土産品として饅頭があるのかも…?」など考えつつ名古屋空港を発った筆者にとって、最初の難関は計16時間にも及ぶフライトだった。いやNZと日本は時差3時間なので実際かかる時間は13時間なんですが、まあこの際3時間くらいはたいしたことではないであろう(←あります)。だいたいハワイなんて19時間も時差があるため、7月31日の19:30に名古屋空港を発ち、ハワイに着くのが同日の7:50と云う、なんかもう時空を超越したスケジュールである。

 しかし問題なのは飛行機初体験にしてこの長時間フライト、しかも夜間飛行なのに騒音と不安でろくに眠れなかったと云うことにある。たぶん隣で「マッセー(留学先の大学)に行きまっせー」、「するめ欲しいか?」などと、笑点に出たら座布団返しをかけられそうなギャグを連発されたのも原因であろう。
 余談だが座布団と言えば大相撲には「横綱が負けると座布団を投げなければならない」と言うルールでもあるのか。で、ソレでひょんひょん飛ぶ座布団を注意して見ると、たまに初級者(←?)の投げたソレが土俵まで届かず、リングサイドで観戦しているブルジョア層にクリーンヒット、むしろ投げたヤツ最初から「貧乏人の恨み今こそここに昇華せん!!」とでも念じてるんじゃねーかと思える状況を目にすることもあるのだが、あれは問題ないのだろうか。

 さてこの短期留学。他の大学でも長期休暇を利用して留学する生徒も多いであろうが、筆者の大学の場合ひと味もふた味もさんま味も違う。実は筆者の大学では必修科目であり、まあソレだけなら修学旅行みたいなものなのだが、下手をすると留学について「不可」食らう可能性があり、そんな状況に陥ったらまた翌年留学しないともう卒業できないのである!! それはそれで面白いのだが、実は筆者はそんなんやだ。

 ともあれそんな恐怖を押し殺しつつの大学2年生の夏。筆者たち英米語学科の場合、この短期留学は「3ヶ国(アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド)の9大学からひとつ選んで1ヶ月」と云うものだった。中国語学科にも同様の短期留学はあるのだが、行方が中国だけなので(そりゃそうだ)筆者ら英米語学科にはとりあえず関係ナシ。筆者としては留学先にイギリスが無かったのがちと残念だった。なんか「何故インドに行けないのだ!?」とか云ってたのも居たが、まあ人それぞれであろう。
 ただこれはウチらの頃の話しで、現在はイギリスも行けるそうです。でも何故かインドは今もって無いらしい。

 さて、留学先にはそれぞれ定員があるため、まず最初に自分の希望先を学生課に届ける必要があった。結果として定員を超過した留学先を選んだ人は抽選で振り分けられるのである。で、その際「何故ここを志望したのか」を書けと云われたので、筆者はそこでかなり迷ったあげく、「南半球の大自然を肌で感じてみたい」とか云う、実に当たり障りなさそうな理由を記入した。
 何故かと云うと、アメリカに行ってしまったらPBM(手紙でやるゲーム)『勇者110番』のスケジュールに実に都合が悪すぎるのである!!(←をい)いや筆者、アメリカ(の特に法律)があんまり好きでないってのが一番大きな理由なんだけど…あとアメリカ英語よりイギリス英語の方が好きってのもアリ。
 一方でニュージーランドとオーストラリアは、真冬の時期を避けるためにアメリカとは3週間ほど時期がずれてるので、スケジュールについては問題なし。そこで何故ニュージーランドかというと、実はオーストラリアは人気バカ高(倍率2倍弱)で、もし抽選に漏れたら常夏の島にして第4次チェックポイントのハワイ(倍率0.05倍…40人枠に2人)直行だからである!!
 何故ハワイがこんなに不人気かというと、暑いからとかボク泳げないもんとかハワイなんてわァたくし毎年行ってるのザマスよホホホとか云う理由では(たぶん)なく、ハワイでは日本語でも充分通じるためさっぱり勉強にならない…ってのが多いらしい。こう見えてみな向学心はあるのだ(見栄かもだけど)。
 ちなみに実は当初からハワイを選んだのはヒトリも居ず、上の2人は倍率が発表されてから「オレは何処でもイイし、せめて余所の倍率を下げてやろう」と移動したナイスガイであった。余談だが毎年の不人気のせいか、現在ハワイは留学先には入っていないそうである…。

 …とまあ、このような裏に秘めた打算をバカ正直に「フハハ、これがマイ志望理由です!!」と書いたら当たり障りどころか祟りもありそうなので、上のようにお茶を濁すことに。フハハ、ここまで当たり障りも祟りも無さそうな理由はそうはあるまい。
 ただ、ホント云うと筆者、くらげ…もとい海洋生物がかなり好きなので、ここはヒトツグレートバリアリーフに行きたかったのだが、よく考えると真冬のグレートバリアリーフはあんまり泳ぎに向いてないような気がするのでパス。あと留学先にグレートバリアリーフに行ける大学が存在しないのも大きかった(←最初からダメじゃん)。

 なお、ここでまとめて当時の留学先候補大学リストを書いておく。「寮」と無い限りホームステイで、基本的に寮生活よりホームステイの方が人気が高く、つまりハワイとオハイオは抽選ハズレ組の行き先なのであった…。ちなみにジョージタウンは首都という恵まれた立地条件の上、元から定員が少なかったのでほぼ定員ちょうどの人気だった。

・アメリカ……ハワイパシフィック大(ハワイ・寮)、カリフォルニア大リバーサイド校(カリフォルニア)、オハイオ大(オハイオ・寮)、ジョージタウン大(ワシントンDC・寮)
・オーストラリア……ウーロンゴン大(ウーロンゴン)、フリンダース大(アデレード)、メルボルン大(メルボルン)
・ニュージーランド……ワイカト大(ハミルトン)、マッセー大(パーマストンノース)


 さて、8月23日夜。石川県金沢市よりバスで4時間、遠路はるばるやって来た名古屋空港。何故か筆者、金属探知ゲートで「ぴぃ」と何故か呼び止められたので、ついヒャハハと高笑いしながら逃げ出してみたいという欲求が脳裏をかすめるも、とりあえず理性が勝って断念し、潔く土産にと忍ばせておいた日本刀を差し出す。いやホントはポケットに入っていた鍵束が原因なんだけど、ともあれ係の人に要らん迷惑をかけつつ無事離陸。レポートの都合上ここでハイジャックとか起こってくれると面白いのだが、何事もなく筆者たちは機上の住人となった。
 処でハイジャックやバスジャックはあるのに何故電車ジャックは無いのだろう。「この『MAXあさひ』は乗っ取った!! 直ちに平壌へ迎え!!」とか云う、別の意味で拘束衣着せられそうなファンキーな人間が居てもいいのに。

 んで機内。時間はとうに夜なので、枕を片手に毛布を頭(←どう云う寝方なのか)、これで寝て起きたらもうそこは大自然のアオテアロア(ニュージーランドの別名。先住民マオリ族の言葉で『白い雲の地』の意)さーとたかをくくっていたら冒頭の調子である。もうゴゴゴゴドドドドジョジョジョジョとやかましいことこの上ない機内では、そも寝て起きるために必要な最低条件、「寝る」コマンドが使えないのだった…。
 ソレでもようやくうとうとし始めた頃、アナウンスが入ってまた覚醒。英語なのでよく判らないが(←判れよ)なんでもシートベルト締めれやコラとのこと。さてはついに着陸かひゃっほうと喜んだのも束の間、着いた先はアロハオエな(←間違い)フィジーであった。「はっもしやウチがうとうとしているうちに本当にハイジャックで進路変更でもしたのか!? おのれ犯人、ハイジャックするならもっと目立つようにやるのが基本だろうに!!」などとひとり憤ってみるが、どうもフィジーは単なる経由地らしい(知らされてなかった)。一時間したら戻れと、飛行機から追い出されて見る異国の朝日は疲れた頭にはきつく、薄れてゆく意識の中でなんかニュージーランドはひどく遠い異国のような気がした……つづく。


ヒトツマエヒトツアト

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