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第69話「最後の仙窟・その四」


 ちなみにこのゲームのジャンルは曰く「ダンジョン育成シミュレーション」…なんか巷間のギャル育成ゲームに毒された方が聞いたら地下室と云う空間を偏愛するようなものすごい特殊な趣味の方向けのゲームだと誤解されそうなんですが、これは言葉の選び方がビミョーに変なだけで、別にダンジョンと会話したりダンジョンが嫉妬状態になったりダンジョンに刺されたりは割としません。実際してることはダンジョン育成と云うよりダンジョン管理なので、もしかしたらこのコピー付けた方はそんなものすごい特殊な趣味の方だったのかもしれませんがともあれ今日もせっせとダンジョン管理をしていると、やって来ました侵入者は伊邪那岐(いざなぎ)、東国の道士。
 あと関係ないですが育成と云えば生首育てる予定の方が居たら感想とかお聞かせください。いやあ筆者はそんな猟奇な物体を偏愛するようなものすごい特殊な趣味ではないので。でも犬耳娘とか育てるかもです。
 で、仙窟の入口を検分すると伊邪那岐は「ここが仙窟ですか。冥界の入口にふさわしい場所ですね」だの「やはり間違いないですね。この石からは、別の世界の気が感じられます」だの、何か妙に独り言らしくない独り言を漏らしつつ仙窟に侵入し、主人公と相対する。ちなみにたぶん気のせいですその気。

 伊邪那岐「私の名はイザナギ」
 主人公「俺はこの洞仙の主、ヘンリー(主人公)」
 伊邪那岐「私は冥界への道を求めてきました」
 主人公「私は中学一年生です。私には兄が2人居ます。あと7人に分裂する姉と最初から12人の妹が居ます
 さくら「何が言いたいのあなた!?」

 いや…なんか中一英語の会話を訳してるみたいな会話だったんで。で、冥界への道などここにはないと突っぱねる主人公に、伊邪那岐はズバリと指を向ける。その扉はなんと!! 主人公の家に直通の要するに何の変哲もないただの扉だった!!(第66話参照)伊邪那岐的センスだとこれでもやっぱり冥界の入口にふさわしい扉になってしまうのか。自分を誤魔化していないか君。もしこの扉が扉ですらなく単にすだれとかでも君はそう言えたか!?


そして罪は伊邪那岐に。



 伊邪那岐「その扉、それこそ冥界に続く封印の扉のはずです」
 さくら「? とびらってこれですか? これって冥界に続いていたの?」
 主人公「何マジ!? わああ!! 怖い!?」
 さくら「ツッコミ入れてよ…」
 主人公「続いているわけないだろ!!」
 さくら「遅いし!?」

 だいたい続いてたらもう家に帰れない。考えてもみるといい、先刻自分が出てきた女子バレー部の部室の扉とかズバリ指さしてソレはもう心底自信満々に「相撲部に続く扉のはずです!!」とか云われたら今自分は何処で何をしていたのかとスゲェ不安になるだろう!? なりませんか。
 ともあれ、ならば力ずくでと戦闘になるが、あっさりと倒されて伊邪那岐は沈黙する。そんな伊邪那岐を心配してか、さくらが「どうして死者の国に行きたいんですか?」とか声を掛けるが、やはり答えないまま伊邪那岐は無言で何処へともなく飛天功(心の翼が今時を飛ぶテレポーテーション)で消えた。

 さくら「あの人、なんだか悲しそうな目をしていたよ」
 主人公「そんなクラムボンが出てきそうな口調で喋られても…」

 ちなみに伊邪那岐が冥界を求める理由は平行世界編の「封印の門」で判るので、必要ならば第39話とかご参照ください。

 さて、一人一人の運命を少しずつ飲み込んでなお物語は続く。そんなこんなでお次は地上、街道を行く西国の勇者様一行に場面を移すと、なんでもまた勇者アレックスとはぐれたらしく、今は騎士ケブレスと魔術師シャスタの2人パーティーだった。彼らの耳にも山外村の仙窟の噂は届いているらしく、どうやら次なる目的地はそこの様子…こうして、「山外村」の仙窟の噂はどんどん広がっていきました。処でなんでこうこのナレーションだと「山外村」ってカッコで括ってあるんでしょうか。

 一方地下では、先刻の自信満々な伊邪那岐の指摘で不安になったので冥界への扉をくぐってみると、そこは案の定何の変哲もない主人公の家だった。でも「変哲」って漢字で書くと何か変な哲さんみたいですね。ソレはそうともし伊邪那岐が首尾良くこの扉をくぐっていたら彼絶望のあまりおかしくなってたんじゃないだろうか。彼は元からかなりおかしい人なので充分素質はあると筆者は思うのです。
 娑婆に出たついでに久方ぶりに隣の宿屋に行ってみると、何時の間にやら大盛況だった。大半は賞金稼ぎだが、会話すると「俺は昔、鉱山で働いていた。ここだけの話しだが…洞仙とやらの洞窟は整備がゆきとどいていて実にすばらしいと思った。洞仙は生け捕りにして祖国へ連れ帰りたいものだ」など、ヒトツ考えると何か恐ろしいアイディアも出てくるので面白い。生け捕りって洞仙はパンダかなんかか。

 で、宿から更に西、死の大地を抜けて、主人公の家ルートを裏口としたらいわば正面玄関から仙窟に行くと、誰が建てたのやら何時の間にか入口にばかでかいマッチョガイの石像がしかも2体も立っていた。なんかの神仏なのだろうがソレにしてもこのマッチョさはあまりにも異常にすぎる。さては筋肉を司る神か。愛で戦う僧侶の居るラ・仏教にはとてもふさわしいような気もするが。そして、主人公とさくらが再び仙窟に消えた頃、宿には一人、シャスタが訪れ、相変わらず居る宿の前の男の子に話し掛けていた。

 シャスタ「ここが山外村ね。ねえ、僕たち?大きな剣を背負った男の人を見なかった?」
 男の子「兵隊さんたちは、みんな大きな剣をもってるよ!」
 シャスタ「そうね……じゃあ、仙窟の入口ってどっちかわかる?」
 男の子「あっちだよ!」
 シャスタ(もしかしたら、ケブレスが先に行ってるかも知れないしね)

 実はケブレスまだ来てないのでシャスタは結局一人で戦うことになるのだが、しかしこのやりとりから察するとシャスタってもしかしてケブレスに対して「大きな剣を背負った男の人」ってイメージしかないのだろうか。そんな描写だけでいきなりもう情報収集を諦めているあたりマジで他にイメージなさそうである。もっとこう「頭髪が淋しくなりかけている」とか「アゴが割れている」とか「白いベルセルク」とかあるだろうに可哀想なケブレス。

 そんなこんなで主人公の前に辿り着いたシャスタ。「八面鏡」の時(第63話)の洞仙だと判り、一気にヒートアップ。なんでもこの勇者一行、主人公を倒すために探していたらしい。さあ戦闘…と云う処で、さくらが止めに入る。「洞仙は大地のために働いている」と云う主張に、シャスタも興味を示し、これは戦いを避けられるかもしれない…と思った矢先、兵士達が乱入してきた!!

 兵士A「だまされてはいけません!!」
 兵士B「やい洞仙、テキトーな事ばっかり言いやがって!!」
 兵士C「そうだ、そうだ!! って俺の台詞これだけ!?」
 兵士D「実家の裏山は、お前ら洞仙のせいでハゲ山になったんだぞ!!」
 兵士A「俺んちのイモばたけも、お前達のせいで今じゃ砂漠よ!!」
 兵士B「って云うかお前ら実は土地持ちのブルジョアだったのか!? キィーねたましい!! でも俺が貧乏なのもきっと洞仙のせいだ!!
 シャスタ「ホントなの?」
 さくら「そんなワケないでしょ!! だいたい何かもうあからさまに違うと思われるのが混じってるじゃん!? 特にそこのA!!」
 兵士A「俺!?」
 兵士B「国中の誰に聞いても同じ答えが返ってくるだろうよ!」
 兵士D「洞仙は、悪い奴!!」
 兵士C「洞仙は、大地を滅ぼす!!」
 シャスタ「…地元住民のお話は、ひじょーに参考になったわ」

 ってことでシャスタ+ザコ兵士4人の連合軍vs主人公、さくら、馬明仙(ばみょうせん)の戦闘開始…も、やっぱり「空斬」1発で勝負はついた。そう云えば伊邪那岐に対しては「龍炎弾」一発でした。起きあがったシャスタは素直に敗北を認める。

 シャスタ「八面鏡の時より更に腕をあげているわね」
 主人公「フフ、修行してるからな!!」
 馬明仙「でもレベルは下がってるけど」
 主人公「何マジ!? そう云えば使える仙術が少ない!!」
 さくら「気付いてなかったの!?」

 そう、このゲームではシナリオごとにレベル1からなのだ。一方侵入者の強さはその時点での主人公のレベルに対応してて、装備ナシでも何とかなるようになっている…と云うことは、装備が良ければ良い程、主人公と侵入者との差は開くことになる。つまり客観的に見ると主人公が強くなっているのではない。シャスタが思い切り弱くなっているのだ!!

 シャスタ「そうなの!? 不思議ね…確かに、あなた達からは悪意は感じられない」
 兵士A「そんなのデタラメだぁ!!」
 兵士B「そうだ!! そうだ!!」

 不思議ねと云う貴女の思考も充分不思議ですシャスタさん。それでブーイングかます兵士だが、さくらがぴきぴきどかーんと頭から湯気出して怒ると脱兎の如く撤退していってしまった。そして、シャスタの方を向くさくら。

 さくら「大地の為に働いてるって信じてもらえたかしら?」

 暴力で制圧したあとにこんな台詞を云ってもソレはむしろ脅迫じゃないのかと思えるのは筆者だけでしょうか。なのでソレに答えて曰くのシャスタさん、「それとこれとは、別問題ね」ってのはそりゃそうである。また会いましょうと残し、彼女も消えた。

 さくら「不思議な人ね」
 主人公「でも、肝心な所はぜんぜん解ってくれなかったみたいだね」
 さくら「そうね…。さ、お仕事を続けましょう」


 洞仙が人々に理解されるまで、道はまだ、長い……つづく。


ひとつマエカオスシードひとつアト

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