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第48話「因果応報・別解その五」


 さて、第45話で去ったちび龍を追って封印された扉の前にやってきたふたりのもとに、再び謎の転生少年道士、王蒼幻(わんそうげん)が現れた。バッドエンドのパターンだと蒼幻、よくあるアドベンチャーゲームのように「あそこでせっかくだから赤い扉を選ぶべきだったわね」とか「どうやって犯人は豪華客船の客室の中心に致死的な落とし穴を作ることができたのかが鍵だったのよ」とか「犯人は実はヤスよ」とか切々とバッドエンドになった理由を説明してくれるのだが(第27話参照)、今回はグッドエンドへの道一直線なのでソレは無い。

 で、マジにカオスシードを復活させた主人公に少し驚きながらも、蒼幻は冷静に状況を分析し、ちび龍にカオスシードを与えるのは止めておいた方がいいと告げた。確かにそれでちび龍を救うことはできるかもしれない…が。

 蒼幻「カオスシードに満たされているのは貴方の感情です。養分を補ったのではなく、心を取り込まれたのですよ」
 主人公「? 種の中に俺の心が入ってるってことか…? 馬鹿な!! じゃあ俺の心は実はこんな小さな種に入る程度のメモリサイズでしかなかったのか!?
 さくら「そこを驚くんかい」
 主人公「でも、俺は怒ることも笑うこともできるぜ!?」
 蒼幻「いやむしろそれしかできないんですか!? ですが、それは貴方がカオスシードを持っているからですよ」
 さくら「…そう云えば将軍に種を取られたとき(第46話)、なんか…変だった…」

 そう…っても、実際のゲームではそこまで異常に変でもないのだが(怒りに我を忘れてたようなカンジ)、まあこれは普段一緒にいるさくらだからこそ判る機微と云うヤツであろう。あるいは普段はお茶目で軽くて脳天気、更にトラブルメーカーな主人公第5話でも書いたチラシの紹介文より)がこのときばかりは真面目にカオスシードを取り返そうとしてたのがとても変だったのかもしれない。典型的な最後だけイイやつになる悪役みたいである。関係ないが「ガチンコ」の教官ってなんで毎度あんな悪そうな顔してるんだろう。もしかして顔で選んでないか。
 あとこのチラシだが、今思うに主人公の紹介よりヒロイン(さくら)の紹介の方がなんか違和感あるような気がする。なんせ「不幸にめげない真面目で明るい性格」である。このチラシの紹介文書いた人はなんか脅迫でもされてたのだろうか。…いやもとい、ヒロインはとても良い性格の女の子ですよ?

 さくら「……」
 蒼幻「心を他者に与えてしまったら、与えた人はどうなるんでしょう。実に興味深いですね。それでも種を龍に与えると云うなら、私は止めませんがね?」

 言い残し、蒼幻は飛天功(テレポート)で消えた。相変わらず他人を不安にさせるのが好きな人である。心を他者に与えたらどうなるのだろう。与えるのが生命ならばなんとなく不老不死になって一緒に人間になるまでえらい引っ張ったストーリーになりそうでむしろグーなのだが(←そうか?)、なんせ心である。やはりギャルゲーでたまに居る、心を閉ざしていてやたら暗いけど話を進めるとだんだん感情ゆたかになってきてエンディングの一枚絵が何故か必ず満面の笑顔で描かれるあの娘(←どの娘だよ)の初期状態みたいなカンジになるのだろうか。

 まあここで悩んでいても仕方ないので、主人公はとっとと「解封呪」で扉の封印を解いた。そしてふたりが入った先は、暗く静かで、そして何処か懐かしい道だった。主人公は知っている。そう、これコピーするのも久々だが、第5話第19話第27話第28話で出た、天桃五輪大武會の会場にあったとしたらきっと誰か落ちて死んだと見せかけて実は生きていそうな溶岩の池に囲まれた岩棚と通じる道だ。おそらく、ちび龍もそこに居る。
 が、ここに来てさくらの足取りは重い。蒼幻の云ったことが本当なら、ちび龍にカオスシードを与えた後に主人公がどうなるかは判らない。だが。

 主人公「何もしないで諦めるなんて俺にはできない」
 さくら「どうして…こんなことになっちゃったんだろう…」

 そりゃあ元を辿れば第20話でさくらとちび龍が出会ったからである。が、そのときそこに卵が在ったのは、更に元を辿れば第9話の平行世界での主人公の行動ゆえ。つまり更に更に辿れば第5話で黒い龍の「天封呪」で主人公が平行世界に飛ばされたためだし、更に更に更に辿ると第27話で主人公が「時封呪」で黒い龍を過去に飛ばしたからだし、更(略)に辿ると第19話で「時封呪」を手に入れたためで、更(略)とやっぱり第5話で主人公が飛ばされたからで、更(略)で(略)る。

 主(略)公「(略)」
 さくら「いつまで略してるのよ!?」

 まあこの辺はプレイヤーだけが判ることである。んでもって、その千年越しの無限ループを断ち切ることができる機会は今しかない。そして、迷いつつも、ふたりはちび龍の元に辿り着いた。驚きつつも、ちび龍はふたりに話しかける。
 この辺のちび龍とのやりとり(罪悪感とかのくだり)はバッドエンドのパターン(第27話)と同じなのだが、今は、主人公の手に完全なカオスシードがある。不完全なカオスシードでは止められなかった思いも、今なら止められるかもしれない。

 ちび龍「僕はこの世界では生きられないんだ…」
 主人公「…お前も苦しかったんだなあ。でも、もう大丈夫。ほら、欲しがってた完全なカオスシード、あげるよ」
 ちび龍「ダメだ。もう遅いんだ!!」
 さくら「!? なに!?」
 主人公「黒い龍…!! 間に合わなかったのか!?」

 その瞬間、ちび龍に力が集まり、彼は黒い龍に変化した。そう、かつて「ここ」で戦ったあの黒い龍。そして、これから黒い龍は千年前に戻り、2年前(第5話)に「ここ」で主人公と再会するまで石と化して待つのだ。史実なら。
 だが、同時にカオスシードが震え、光を放ち、主人公と黒い龍の意識が結ばれる。何処とも知れない意識世界の中、声が聞こえた。


 あなたは、あなたの全てを引き替えにしても、この龍を助けたいのですか?


いやー「魔剣X」思い出すので…。



 ……つづく。


ひとつマエカオスシードひとつアト

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