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第39話「封印の門・別解その一の三」


 冥界の番人から逃げる途中、伊邪那岐(いざなぎ)がその場に留まったことを知った主人公は、即座にきびすを返す。さくらたちは止めるが、このまま見捨てる訳にはいかない…。

 さくら「なんでよ!! あの人はあなたを殺そうとしたのよ!! それなのになんで助けるの!?」
 主人公「そんなんごく普通にあることじゃないか!! バトルなマンガの主人公、または序盤に出てきて主人公を叩きのめした上で終盤で主人公に返り討ちにされる予定の悪役としては当然の義務だ!!
 さくら「義務なの!? でも…残ったのだって何か理由があったのかもしれないじゃない?」

 そう…伊邪那岐が冥界に来たのには何か目的があり、それが未達成である以上、自分の意志で残ったのは間違いないが…それにしたって、どうせ残る気だったなら最初から逃げて来なかったような気もする。

 主人公「これらの事実から推理すると…おそらく、もとより残るつもりだったが番人には勝てない、ならば逃げる俺たちを囮にして自分だけ隠れて番人をやり過ごそうとした…とかだろう。ちなみに不思議なことに今俺は何故か伊邪那岐を助けに行きたくなくなってしまった
 シャスタ「不思議ねえ」

 まあここで行かないと話しが終わらないので行くと、先刻の場所で倒れている伊邪那岐。とりあえず生命に別状は無い様子で、回復功を掛けるとすぐに彼は起きあがり、怪訝そうに問う。先ほどのさくらと同じ問いだった。

 伊邪那岐「…どうして私を助けるんですか? 私はあなたを殺そうとしたんですよ?」
 主人公「義務…もとい、さっきの不意打ちの仕返しをするためさ!!」

 なんかブラックジャックのようなことを云い置き、「ここは俺がくい止める」と、主人公は冥界の守護者の方へ向かう。相手は強い。勝てるとは思わない。なのに、この絶望的な力の差にも、彼は笑って伊邪那岐に背を向けた……それが、伊邪那岐が彼の姿を見た最後だった。その後、荒れ果てた大地は二度と復活することはなかったと云う……。


 …終わり。次回は「ONE〜輝く季節へ〜」のベストエンドです。


 伊邪那岐「って、終わるんですか!?」
 主人公「いやー、戦闘に負けるとこういうバッドエンドもあるってことを今まで書いていなかったので、たまにはこんなギャルゲーみたいなスゲェ絶望的な終わり方もステキでいいかと」

 いいのか。あと筆者普段どういうゲームをしているのかとかは気にしないようにお願いします。で、先へ進むと時空が歪み、亜空間へと引きずり込まれ、冥界の番人との戦いが始まった!! …が、冥界の番人はさんざ怖そうな描写があった割に、あっただけだった。ものの10秒で片付く。怖いと云えばクッパ城の最後に出てくるハンマーブロスにチビマリオで攻める方が余程怖い。
 しかし番人を倒したはいいが、ここは閉じた空間のようで、飛天功(テレポートな仙術)を使っても同じところに出てしまう!! まるでクッパ城の無限ループのマップで正解を知らなかったあの時のようである!!

 主人公「筆者クッパ城になんか嫌な思い出でもあるのか…? しかし完全に閉じこめられてしまった。どうしたもんかな…」
 伊邪那岐「早くこちらへ!! 正解は3・4・3の順で土管に入ることです!! いやもとい、ここはもうすぐ消えて無くなります」

 と、伊邪那岐がどこからともなくテレポートしてきて、その助けでようやく脱出、元の冥界へ戻ることができた。が、番人が倒されたことでどうも時空が不安定になっているらしく、3・4・3で「さしみ」と覚えたあの頃を今懐かしむ暇もない。

 主人公「ふう、助かったぜ。でも、なんで俺を助けに…?」
 伊邪那岐「それは…先ほどの私の質問と同じですね」
 主人公「それもそっか……ハッ!? じゃあもしや俺に別の平行世界でボコられた(第12話とか第19話とか第34話とか)仕返しをするために!?」
 伊邪那岐「そんなんあったんですか!? ぬうならばぜひ!!」

 そして、肝心な質問。伊邪那岐は何故ここまで冥界にこだわるのか…を問うと、彼は頷いた。

 伊邪那岐「判りました。お話ししましょう。ここへ導いてくれたのはあなたですからね。……私には、イザナミと云う妻がいたのですが……」

 …かつて伊邪那岐は、イザナミの止めるのも聞かず、禁断の力を手に入れるために冥府の王を喚ぼうとしたとこ、ついあくびとかくしゃみとかしてしまったのか間違えて魔導の王を召喚、しかも口先ヒトツで騙されて名を告げてしまって契約完了、3日後に冥界に堕ちて魂俺のモノと云う泣きっ面に八兵衛な過去があったのだった。これは推測だが、伊邪那岐の家には玄関に置いておくだけで福を招いてくれる風水の壺とか、本当は100万円するところを今日だけの特別価格30万円で購入した元値1万円の羽毛布団とか、なんと1日たったの30分間テープを聞くだけで英語が喋れるようになる準備として毎日2時間予習をする必要があるとてもすごい教材とかいろいろ山積みにされてると思う。イザナミも旦那の契約詐欺には慣れてるから止めたのだろう。


この物語はフィクションです。



 で、その3日後。伊邪那岐はあれからずっと昏睡したままだったのだが、その日、魂のみが先日魔導の王に遭った部屋に召された。もはや逆らうこともできず、ただイザナミへの思いのみを残してこの世から去ろうとする伊邪那岐だったが…そのとき。その部屋に、イザナミは現れた。3日前に伊邪那岐がそうしたように魔導の王を召喚した彼女は、代わりに自分が冥界に堕ちる、だから伊邪那岐を元に戻してくれと望み……名を告げた。

 魔導の王「…未来永劫果てることのない苦痛を味わうことになろうともか?」
 イザナミ「かまいません!!」
 伊邪那岐「バカな!! よせイザナミ!!」

 迷いもなく言い切るイザナミに叫んだ、けれど魂だけの存在である伊邪那岐の姿は彼女には見えない。声も届かない。そして契約は完了し……伊邪那岐は、そこで目覚めた。なんだ夢オチかと一瞬心の底から安心するも(←するなよ)、もうそこにイザナミは居なかった。そのまま、彼女は帰らなかった。次の日も、その次の日も。

 伊邪那岐「…この冥界の何処かで、イザナミは今も…」
 主人公「……そうか」
 さくら「その…イザナミさんのために、冥界に来たんですね…」

 何時の間にか、さくらとシャスタが側に来ていた。イザナミを助けたいという信念それのみで、伊邪那岐は居る。他の平行世界でもそうだが、そうして伊邪那岐は果てしない旅を続けているのだ……以下筆者感想……この辺の元ネタはたぶん名の通り日本神話の伊邪那岐と伊邪那美…と思うんですが、スタッフロールで流れる、冥界の出口で振り返ったら消える…って云うシーンはギリシア神話のオイディプスとエウリディケの話し。興味ある方は比較してみるも面白いかもです。日本神話の方はなんか浪漫もへったくれもないよ!?


 伊邪那岐の方はいいとして、主人公たちがここを訪れた理由…ここに大地の陽気が流れ込んでいる原因は、依然として不明だった。だが、番人を倒したことで、どうもここに通じる道はもうじき閉じそうだし、道が無くなれば気も流れぬ道理。であれば、後は大地は自然に復活するだろう。
 ならば主人公たちは長居は無用、道が消える前に早く帰らねばならないのだが、伊邪那岐は動こうとしない。理由は、聞くまでもなかったけれど。

 伊邪那岐「もちろん、私はここに残ります。イザナミに会うまでは」
 主人公「…元の世界に戻れなくなるかもしれないんだぜ?」
 伊邪那岐「かまいませんよ」

 迷いもなく、伊邪那岐は言い切った。あのときのイザナミのように。因果応報と云え、彼もまたその宿世を乗り越えようとするひとりの主人公なのだ。いつか、ふたりが出会えますように。


 そして伊邪那岐に別れを告げ、3人は生ある者の住むべき世界へと走り出した。


 …終わり。次回は「杞人之憂」のバッドエンドです。


ひとつマエカオスシードひとつアト

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