トップ更新履歴リンク

第31話「杞人之憂・その一」


 (この世界では)洞天福国の指導者、王蒼幻(わんそうげん)は悩んでいた。かつて、気が進まぬながらも民草の不安を受けて戦い、10年は戻らぬようにと追放した洞仙が、今度は弟子を連れて戻ってきたと云うのだ。あのとき殺さなかったからと再び不安を募らせる民…この10年、民の意識を変えようと勤めてきたが、やはり長年の嫌悪感がそう簡単に変わる物でもない。現代の考えで例えるなら洞仙はシロアリのような存在(と思われている)、なんぼなんでも自分ちの床下を不法占拠するシロアリに対して腕白でも良いからたくましく健やかに育てよと云える程の愛を持つなど北の動物王国の国王様以外無理である(←国王様でも無理だろう)。蒼幻個人としては洞仙即悪と云う意識は無いのだが、為政者として民の不安を放っておくこともできない…。
 …そして蒼幻は、ひとつの決断を下した。


 さて、いつもの導入部解説ですが、今回は平行世界編なので、物語的には第5話の最後に無数の平行世界に飛ばされた主人公のうちのひとりの後日談となります。
 処でビミョーに関係あるのだが、今回のシナリオタイトル「杞人之憂」。学校で習ったかもしれないが、これはつまり「杞憂」で、「杞(き)」と云う国に住んでいたランドルフ(仮名)が「もし天が落っこちてきたらどうしようきっと実は俺の住んでいるこの国の建物は全て書き割りで空は壁に描いただけでそしてどっかで四六時中カメラが回って全世界の人間が見物しているんだ俺を俺を」としょうもない心配をしていたと云う故事から来た言葉である。先生の云うことと多少違うかも知れないがまああまり気にせぬように。で、何が云いたかったのかというと、これ「単に『杞』の国だったから『杞憂』」なのであって、もしランドルフが「陳(ちん)」の国に住んでたら「ちんゆう」になってたのである。それはぼくはなんかいやだ!! ありがとうランドルフ。…まあそんなわけで本編をお楽しみください。


 で、この世界の三界老師に出会い、長い修行を積む主人公。そしていつしかその修行も終わりに近付いていた…。

 三界老師(さんかいろうし)「…洞仙とは、なんじゃ?」
 主人公「はい。大地の力を借り、龍脈を守るものです」
 三界老師「いやそこはボケるとこじゃろう!?
 主人公「なんでやねん!! …ハッついツッコミ入れてしまった!? じゃあ洞仙とはッ!! 巨大化して目からビーム出して触手を再生して一度倒されると変形する魔王です!!
 三界老師「その通り!!」

 違います。ともあれ、これで主人公に教えるべきことはなくなったと、老師は伝えた。しかし、辛いのはこれからなのだ。洞仙は孤独な存在。家の柱を食うと云う仕事…もとい大地を守ると云う仕事を街の人は理解できないから、攻め込んで来る兵達と争わなければならないことも少なくはない。老師自身、かつてある男との戦いに破れ、土地を追放されたことがあると云う。互いの立場ゆえに避けられなかった戦いだが、それ自体は公平だったのでその男を恨むことはないとのこと。

 主人公「まあ老師弱いですからね!!」
 三界老師「失礼な!? まあとにかく、お主にもそんな時があるかもしれん。そこで何を信じ、どう乗り越えるかはお主しだいじゃ…」
 主人公「なんか悪の道に染まった元・正義のヒーローが現・正義のヒーローに倒されたときの回想シーンに出てきそうな話しですね…
 三界老師「じゃあお主、悪か…?


 そして、そんなある日。険しい岩山の頂上に建つ老師の家を訪ねた主人公は、居ると言っていたはずの老師が留守であることを怪訝に思い、これはもうきっと何か事件に巻き込まれたに違いあるまいとばかりに家捜しを開始する!! んで一通の手紙を発見し、マジで愕然とした!!


雨の日も雪の日もお疲れさまです。



 まあたぶん蒼幻が仙術とか使い魔で送りつけたのだろうが、とにかく手紙フロム王蒼幻。そう、以前三界老師を負かして追い出したのは蒼幻だったのだ!! その手紙の内容は「やっぱみんな不安がって最後の勝負しなきゃならんのでカモン老師だっちゃ!!」と云うものだったのだが、その勝負の日付は既に過ぎていて、老師がここに居ない…と云うことは!! 推理力のある諸兄ならこの状況、もう凶器の冷凍バナナを片手にニタリと悪人笑いを浮かべている蒼幻っぽいシルエットの手前にぐったりと倒れている老師の映像以外は頭をよぎらないだろう!!(←ソレは推理力があるのか)とにかく蒼幻に会うために、主人公は洞天福の街へと飛んだ!!
 んで、街の人に聞くとあっさりと蒼幻の居場所が判明し、割と簡単に会うことが出来た。しかしなんか途中人の曰く、「蒼幻は最近真剣勝負をして勝ったらしい」とのことで、もはや老師の生存は絶望的かと思われるが、とにかく蒼幻に会うと、彼は頷いた。

 蒼幻「なるほど、老師のお弟子さんでしたか…勝負は、公平に行われました」
 主人公「それで、老師は!? まあ悪いようにはしないからとっとと吐けや。とりあえずカツ丼食うか?」
 蒼幻「…私には、貴方の挑戦を受ける義務があります」
 主人公「ムキー!! そんな曖昧な返答するからこんな序盤って云うかプロローグでシナリオが分岐してしまってセーブデータから別エンディングに行けなくなるんじゃん!? しかも私的にいちばんうざったいシナリオで!!
 蒼幻「いや…貴方は何に対して怒っているのですか…?」

 いや第10話でも書いたが筆者、このシナリオがいちばんうざったいのである。詳しくは次回以降、いかにこのシナリオがうざったくかつめんどくさいかをいつもの(…?)切ない文体で綴る青春のエレジーをお楽しみください。ともかく「ヘイ俺の仙窟でバリバリ勝負しようぜ!!」と云う話しになり、主人公は蒼幻の瞑想室を後にした。

 で…このまま仙窟に行っても良いのだが、それだと即バッドエンド決定なので…もとい、まあせっかく街に来たんだしってことであちこちで情報を聞いておくことにし、まずは街外れの兵舎に行く。この兵舎、シナリオによってはもはや単なる心と頭のサナトリウムとしか思えないステキな場所と化すのだが(第9話参照)、今回はごく普通の人間しか居なかった。

 僧侶「ウワッハハハ!! 実は最近聖獣の召喚に成功してしまって笑いが止まらんのだが聞きたいかね君ィ!? ならばッ君だけにこっそり教えよう!!
 主人公「いや何処がごく普通の人間やねん!? そんな最重要そうな機密をあっさり通りすがりのちっとも洞仙じゃない俺に教えていいの!?」
 僧侶「何、愛さえあれば全ては乗り越えられるとも!!」
 主人公「わあ実はまたアンタだったのか!?」

 いやたぶん違うと思うのだが、第12話とかでも書いたように筆者、この愛で戦う僧侶(命名『ラヴ僧』。略して『ラ・ボゥズ』)なんかみょーに好きなので、僧侶と云えばラヴである。別れ際にはもちろんアディ・ユー。きっと洞天福では仏教は仏だけにフランス語風の冠詞を付けて「ラ・仏教」と云うのだろう!!
 で、彼の云うに召喚に成功した聖獣とは鳳凰のことで、いずれ実戦に投入される予定らしい。実は鳳凰って前回の神無と同じ大ボスランキング最弱の鳥なのだが(このゲームでは大ボスは数種類しか居ない)、自信満々な彼にその旨ツッコミかますのも不憫なので、今はただそっとしておいてやることにする。消える直前の蝋燭がいちばん輝くように(←ひどい)。

 んで、うろついていると今度は謎の侍に出会った。「手合わせ願うために強者を探している」と云う彼は、もちろん第26話で出てきた捜神死郎(そうじんしろう)なのだが、この世界で出会うのは初めてである。

 主人公「強者か…兵舎に居る僧侶はソレはもうとてつもなく強いらしいよ? 正面からやったら勝てそうにないから月のない夜道で背後から無言で斬りかかるといいだろう!!(←殺人教唆じゃねーか)
 死郎「なるほど!! いやこれはいいことを聞かせてもらった!!(←しかも納得するなよ)」

 ちなみに実際は「俺は強いぜ?」か「蒼幻は強い」って云う選択肢が出るのだが、どちらにせよ死郎は後で仙窟に侵入してくることになる。

 まだうろついて、今度は酒場へと入る。昼間っからカウンターを占領して呑んだくれている公明紅(こうめいほん)はあっさり無視し、二階への階段を上がる。

 明紅「ひっく!! ちょっと無視しないでよ!? 今回のトップ絵なのに紹介もなし!? ひっく!!」
 主人公「なんだそのやけくそのような『ひっく!!』ってのは!? いやけど実は毎回トップ絵に使うと同時に人物紹介にも入ってるんですよ!? 必要ならご確認ください!!(←誰に言ってるのか)
 明紅「ならまあいいわ…ひっく。処でこれもなんかの縁、ちょっと付き合いなさい」
 主人公「いや俺はこう見えて修行中の身なので、じゃあビールを」
 明紅「温めますか?
 主人公「いや君が温めるのか!? しかもビールを!?

 まあ酔っぱらいの言うことだし…って、なんか調子に乗って書いてたらもうこんなサイズになってしまったので、ちょうどこのキリの悪いところで以下次回!!

 主人公「悪いんかい!?」


ひとつマエカオスシードひとつアト

トップ更新履歴リンク
inserted by FC2 system