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第5話「最初の仙窟・その三」


 三界老師「…この気は…邪悪…?」


 封印の扉の先には、触れるだけで不安になるような空気に満ちた、暗く静かな道が続いていた。

 主人公「…ここは…」

 それは、既視感を感じる光景。そして、どこからともなく届いてくる声。

 主人公「だっ誰だ! 弥七か!?
 声「久しぶりの友人に誰だはないだろ。…早く、ボクの所に来いよ。…そのまま進むんだ」
 主人公「何だ、お前ホイミンか!! 俺別に『そらとぶくつ』なんか要らんぞ?」
 声「いやそもそもあの声ホイミンと違うだろ!?

 そうだっけ。ともかく道は一本、怪しいは怪しいが先へ進むしかない。そして途中、声の主の仕掛けたらしい罠に馬明仙が掛かってしまう。慌てて助け起こすも、もう動かない。

 主人公「姉御!? 姉御…返事してくれよ」
 声「そいつが死ぬと悲しいか…?」
 主人公「いや死ぬと悲しいと云うよりHP&MPの3割ボーナスが無効になっちゃうのがむしろ悲しい!!
 声「おいソレでいいのか」

 実のとこ、仙獣は本当の意味では死なない。もともと仙獣は仙獣界の存在で、この世界では本来実体のないとこに仙丹(イロイロなことに使えるなんか変な丸いの)で作った身体を依代にしてるカンジで、物理的に死んでもまた仙丹を使えば簡単に復活するので、あんまりこだわる必要はない。


 そして着いた場所は、天挑五輪大武會の会場にあったとしたらきっと誰か落ちて死んだと見せかけて実は生きていそうな溶岩の池に囲まれた盆のような場所だった。生きる物何ひとつない炎の湖の孤島、ただ立っているひとつの石像。ソレは。

 主人公「龍…?」

 ソレは、彼が近付くと、石像であることを辞めた。闇のように黒い龍。彼は笑う。先刻の声で。

 黒い龍「ひさしぶりだね…待った甲斐があったよ。石化して、時を待ったのさ。君に再会したい一心でね。…石となっても、千年の時は永かったよ」


ソレはまあ…。



 主人公「再会!? なんの話しだよ!! そんな千年前からの知り合いなんてムーとか読んでないまっとうな一般市民の俺には普通居ないハズだ!?
 黒い龍「ククッ…『まだ』知らないだけさ。だいたい君このゲームの販促チラシで『主人公:まだまだ見習いの洞仙。お茶目で軽くて脳天気、さらにトラブルメーカー。自業自得でパラレルワールドをさまよう羽目におちいる』とか云うもう夢も希望もなんもない紹介文書かれてたくせに平穏無事な人生送れるとでも思ってたのかい?」
 主人公「へぶあー!! そんなもはや誰も覚えてないような発売前のチラシの話しなんて蒸し返さないでくれよ!? だいたい誰だよこんな紹介文書いたのは!! そこの奥さん、この紹介文見て俺に『あらステキね★』とか好感持てる未亡人がこの世にどれほど居ると思う!? 主人公なのに人気投票で蔵馬にも飛影にも勝てなかった幽助のことを今ならもれなく笑えないよ俺!?
 黒い龍「君も苦労してるんだねえ…」

 ちなみにこのチラシ、資料集に収録されていないイラストが載っているので実はちょっとレアかもしれない(『点心爛漫』の5ページの絵のバックにヒロインが描かれてたのがなんかカットされてる)。

 で、主人公はほとんど一撃で黒い龍に倒されてしまう。

 主人公「う…うう、さすが強制敗北シナリオ…容赦ないぜ」
 黒い龍「平行世界に行く予定だったよね。今度こそ送ってあげるよ…バラバラにしてね」

 と、そこに三界老師がいきなりワープしてくる!! まるでヒロインのピンチに登場する変身ヒーローのようにキラリと輝く頭!!

 三界老師「そうはさせん! 今助けてやるぞ!!」
 主人公「老師! あんたレベル5の時の俺より弱いじゃないですか!! 充分勝てませんって!!」
 三界老師「いきなり不吉なこと云うな!! そこで見ておれ!!」
 主人公「いやですよ! この展開はきっとアレだ、師匠が殺されて生き残った弟子が仇を討つというありがちな話し!! 例えば同じドラゴンつながりの例だとピッコロ大魔王の話しみたいに老師が殺されてオレはハードな修行するはめになったり同じ中華つながりの例だと男塾の卍丸の話しみたいに師匠が殺されてやっぱりハードな修行せなならんのですよそんなめんどくさい!!
 三界老師「お前それでも弟子か!?」
 黒い龍「あの…漫才してるとこすみませんがもういいですか?」
 三界老師「はて…あんた誰じゃったかの…?」
 主人公「もう忘れてるし!!

 そして(案の定)、老師は龍に一撃で倒され、殺されこそしなかったが龍の気まぐれで石にされてしまう。

 主人公「なんてこったい…ドラゴンはドラゴンでもドラゴンボールでなくてドラクエ5か…俺はアレはゲレゲレだと思うんだがどうか
 黒い龍「いやどうかと言われても。ええとそうそう、平行世界に送るんだっけ」
 主人公「平行…世界…?」
 黒い龍「そうさ…天の陽気よ。地の陰気よ。我に集まりて力となれ」

 薄れ壊れてゆく意識の中、龍の声だけが妙に明瞭に聞こえた、気がした。


 「…天封呪」


 …そして彼は、この世界から消滅した。


ひとつマエカオスシードひとつアト

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